「この子まだ決まってない」と言って娘が抱き上げた野良猫の影がキリンの形をしている。
お父さんと銭湯に行って、お父さんの背中を流している時、その背中のファスナーを見て、いつか来る自分の成人の日に思いをはせた。
ある明け方、月がお風呂を借りに来たが、満月だったので、湯船の湯はたくさん溢れてしまうだろう。
満員電車に乗り合わせた全ての人の鼻から鼻毛が出ているのを見て、お父さんの実験、うまくいってるんだな、と実感する。
動物園の近くにあるその神社の賽銭箱は、林檎やバナナも入れられるようになっている。
月が入っていた段ボール箱の中で兎を飼う。
その虫を捕る罠を作るために、薔薇の花束とワインを買う。
この町の郵便ポストに開いている丸い穴は、流れ星を入れるためのものなんだよ。
台所の三角コーナーをふと見ると、残飯の上に、蝿の名刺が数枚置かれていた。
蜜柑を与えると開く改札がメンテナンス後、白い筋を取らないと開かないようになって面倒だ。
風鈴を買ったから、明日の風を予約しておいてちょうだい。
夏祭りの金魚すくいの屋台で、前世も金魚の金魚だけをすくって飼う。
蝶々賭博の現場に突入した刑事たちが、花の匂いに思わずむせる。
天国のママに会いたいから肩車して、パパ。
今年の風邪はくしゃみの前に鼻の穴が光るからわかりやすい。
母がダイエットする宣言をしたので、母の墓前に供える饅頭を甘さ控えめのものにする。
雨男になるための手術を受けながら、彼女とのデートに思いをはせる。
授業中、前の席の女子の髪の毛の一本が、窓の外のUFOの動きに合わせて動いているので、つまんで引っ張ったら、窓の外から爆発音が聞こえてきた。
神様に地上のレモンを全て没収された翌日、酸っぱい雨が降ってくる。
お風呂で上機嫌で歌っている母に、「空にUFO集まってきてるよ」と注意する。
ペットに玩具として与えた惑星でちょっと文明が進みすぎている。
今日の入道雲はバーコードのある方がこちらを向いているからはずれだ。
コインランドリーの大型乾燥機で回る私の下着の動きに合わせ、ぐるぐる飛び回っていた人魂が、突然、立ち眩みを起こしたかのように、ぽとりと地面に落ちた。
詩を書くことをやめたら、頭に蝿がまとわりついてこなくなった。
悩んでいたので、冷凍の哲学者を冷凍庫から取り出し、レンジで解凍したが、解凍時間を間違えて、温めすぎた哲学者の気味の悪い笑い声を聞くはめになる。
空からタイムカードを打刻する音が聞こえてきたので、この雨ももうじき止むだろう。
UFOと胃カメラの追いかけっこを画面越しに眺めながら、腹部に広がるかつてない快感に気絶しそうになっている。
止まない雨が降る中を、スピーカーから「てるてる坊主が不足しています」というアナウンスを流す軽トラが、ゆっくり走っている。
毛生え薬で満たされたプールで、床屋の店主の溺死体が発見された。
ドラッグストアのムダ毛処理用品の棚に、ダイナマイトが置かれていた。