超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ネジ

 犬の散歩の途中、ふと夜空を見上げる。星が光っている。ふいにおじいちゃんのことを思い出す。光ってる星の中には、夜空を支えるネジの頭が混じっていて、月の光を反射しているんだ。昔おじいちゃんにそう教わったことがある。ネジ工場の職人だったおじいちゃん。子どもの頃はそんなわけないよとバカにしていたけど、大人になった今ではおじいちゃんの話を信じられるようになった。しばらく墓参り行ってないなあ。おじいちゃん。ネジのおかげで、今夜も夜空は静かで堅牢だ。足元で犬が俺の顔を見つめながら、へっへと笑ってしっぽをふっていた。