超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

思春期

 家庭科の先生に付き添われて、男子生徒が保健室にやってきた。彼の顔を見ると、のっぺらぼう。ところどころに、黒や赤のうずまきが残っている。先生に話を聞くと、調理実習で使っていた泡立て器を、うっかり自分の顔に突っ込んでかき混ぜてしまったのだという。うっかり突っ込むか?泡立て器。まぁ、いい。とりあえず生徒手帳の写真を見ながら、顔を作り直す。彼の顔から赤い部分をちぎって唇を作ったところで、唇が動いた。「イケメンにしてください……」ははん。やっぱり、わざとだな、こいつ。元の顔は別に悪くないんだから、無茶するなよな。思春期ってそんなものだと言われればそうかもしれないけど。