超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

水と声

 バイト先のカラオケ店に、蛇口の客がやってきた。台所からシャワー、庭にあるものから洗濯機用のものまで、様々な種類の蛇口の団体客だった。普段水ばかり出しているから、たまには声を出したいということらしかった。案内した部屋へと向かっていくシャワーの後ろ姿は色っぽかった。ドリンクを部屋へ運んでいった時、一番大きな蛇口が「川の流れのように」を歌っていた。何か象徴的な意味があるのだろうか。思わずそんなことを考えていたら、たこ焼きを温めすぎていて、先輩に叱られた。