超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

大腿骨

 理科室の窓辺に身を預け、骨格模型が空を見上げていた。何かおもしろいものでもあるのかと思い、その視線の先をぼくも見上げると、よく晴れた青空に、大腿骨そっくりの雲が浮かんでいた。骨格模型らしいや、ふふん、とぼくが鼻を鳴らすと、骨格模型は歯の奥で、こつり、と不満げな音を鳴らした。理科の授業が始まると、骨格模型はもっともらしい顔をして、理科の先生にされるがままだった。大腿骨みたいな形の雲は、いつの間にかどこかへ消えていた。っていうことがありました今日。