超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

あたり

 焼き魚の骨に「あたり」の文字をみつけたので、新しい魚ととりかえてもらうため海へいった。「あたり」の骨を海へ投げると、すぐに大きな魚が波に運ばれて足元へ。さっそく持ち帰り、網の上で焼いているとき、その魚が、卵をたくさん抱えていることに気がついた。……おれが「あたり」をあてなければ、この卵はみんなふ化できたのかな。でも、「あたり」は「あたり」だもんな。でも……。そんなことを考えていたら、指を少しやけどしてしまった。魚もその卵も、味はふつうだった。今度の骨には何も書かれていなかった。