超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

種と扇風機

 夏の暑さも和らいできたので扇風機を片付けようとすると、畳の上に小さな黒い種が落ちた。
 スイカを食べた時に何かの拍子でくっついたのだろう。
 種を拾い、庭に投げ捨てて扇風機を物置にしまった。

 翌年のある春の日のことだった。
 ふと庭を見ると、去年何気なく種を捨てた場所から、ちっちゃな扇風機が生えていた。
 物置に元の扇風機を見に行くと、枯れた色の羽根を床に落とし、本体はすっかり萎みきっていた。
 こうなると知っていればもっと日当たりの良い場所に埋めたのに。
 とりあえず今年の夏に間に合うように頑張って育ててみることにした。
 ショートしそうで水はまだあげられていないけど。