長い雨が降った次の日、庭の隅に水たまりが現れた。鏡のように美しい、傷ひとつないその水面を、庭で飼っている飼い犬が興味深そうに覗き込んでいる。
洗濯物を干しながらその様子を眺めていると、とつぜん水たまりの中から、女らしい腕が出てきて飼い犬をゆっくり撫ではじめた。
びっくりしたが飼い犬もまんざらでもない様子なので、そのままにしておいたら、撫でられるにつれ段々と、犬が小さくなっていることに気づいた。
慌てて洗濯物を放り出して水たまりに近づくと、水面に映った向こう側の飼い犬があべこべに、段々と大きくなっていく。あっと思ったときには犬はすでに撫で尽くされ、すっかり水たまりの向こうへ行ってしまった。飼い犬の名を叫びながら、水たまりに思い切り腕を突っ込んだが、柔らかい土が沈んでいるだけだった。