2014-03-07 黴と沈黙 トモコからきいた話 その鯨は、一人ぼっちで生まれて、一人ぼっちで暮らしていたので、それを見てたくさんの船乗りが、鯨の物語を作った。 あるとき鯨は、さびしくなって、陸に上がったが、村の灯りを見つけたところで、力尽きてしまった。それを聞きつけて、たくさんの旅人が、鯨の詩をこしらえた。 年月が経ち、死んだ鯨を、苔と黴と砂が覆って、やがて鯨の体は、小さな山になった。 何の変哲もない山なので、誰も見向きもしなかったが、時々子供たちなどがのぼって遊んだ。