超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ある日の夜中、べろんべろんに酔った母親が、知らない女の人を家に連れて帰ってきて、私の部屋に入るなり、「どっちが本当のお母さんでしょー?」

「ミルクは入れない。砂糖は一個。涙は二滴」涙二滴か。一人きりのキッチンで、少し悲しいことを頭に浮かべ始める午後。

だめだね

そのことがあってから、月と太陽のリモコンは神様が没収してしまったそうだ。人間は、だめだね。

わかりました

わかりました、あなたの遺骨を盗みます。

一周忌

弟の一周忌の時、喪服がキツくなっていた。幸せ肥りだ。

ブログ

引きこもりの兄が、ぼくのブログを読んで、祖母の死を知る。

もー、火星人食べてる時に地球人の話しないでっ。

猫葬

祖父は猫葬で弔われた。体の大きかった祖父は、十六匹の猫になって帰ってきた。私は白猫をもらった。背中にほくろのような点が一つ。私は、ああ、右手だ、と思ったが、祖母は「金玉だ」と言って譲らない。

線香

近所の小学校の、何もいない飼育小屋の中に、線香が五本。あれ?殺したのは四匹だったはず。

青空

今日も雲一つない青空。もう在庫がないそうだ。

痩せた

前に蛇を殺した後、痩せたから、夏に向けて、また、蛇を探す。

今日

刑務所に面会に来てくれた彼女は、ウェディングドレス姿だった。ああ、そっか、今日だったっけ。

今日は二番の穴に夕日が沈んでいったから、明日は曇りだ。

先生

お世話になっている占い師の先生と同じ精神安定剤を飲んでいます。