超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 犬を散歩させていたら、紳士が近寄ってきて、犬を撫でた。「名前は?」と訊くので「××です」と答えると、紳士は犬に「本当の名は?」と尋ねた。犬は小さく、わわん、と吠えた。「いい名だね」紳士は笑って去っていった。私と犬との間を、微かに風が通り抜けていった。