超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

歯医者

 歯医者に行くと、待合室にテレビが二つ置かれていた。「片方は患者さんなんです」受付のお姉さんがそっと教えてくれた。「持ち主の方が、甘いラブストーリーばっかり観ていたせいなんですって」なるほど確かに画面が少し腫れている。「テレビさーん」呼ばれてテレビは台車で運ばれていった。うちのテレビはどうかなあ。ニュース番組ばかり観ているから、何となく、顎は丈夫な気がするけど。そんなことをぼんやり考えつつ、週刊誌をめくりながら、順番を待っていた。キュイィィン。あ、始まった。