超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ゴトゴトプシュー

 ゴトゴト、ゴトゴト、プシュー。廊下の突き当たりの部屋からそんな音が聞こえてきたかと思うと、扉を開けてお母さんが出てきた後から、一匹の猫が飛び出してきて、二階へ駆けていった。鼠が出たのだろう。あの猫、さっきまではおじいちゃんで、ぼくにお小遣いをくれた。お母さんが晩ご飯を作り出す頃には炊飯器になっていることだろう。便利な世の中になった、とお母さんは言う。ゴトゴト、ゴトゴト、プシュー。なぜか死んだお父さんにはならない。理由を訊いてもお母さんは教えてくれない。