超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

握手

 通学路のとちゅうに、段ボール箱が置かれていた。「拾ってください」と書かれてあった。中を覗くと、手首があった。女の人の手首だった。一緒に入れられていたビー玉で遊んでいた。ぼくに気づくと手首は、ひらひらと手をふってきた。「うち、アパートだから飼えないんだ」そう言うと手首はしょんぼりしたようだった。「ごめんね」ぼくと手首は握手して別れた。手のひらから、ほのかに石鹸の香りがした。