2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
実験室の隅のシャーレの中の町から祭囃子が聞こえてきて、僕らは思わず顔を見合わせた。
「この子まだ決まってない」と言って娘が抱き上げた野良猫の影がキリンの形をしている。
お父さんと銭湯に行って、お父さんの背中を流している時、その背中のファスナーを見て、いつか来る自分の成人の日に思いをはせた。
その動物園には、拷問用の鏡があるそうだ。
体内に火葬場が出来た父が、鼻や口から出てくる煙をごまかすため、煙草を再び吸い始めた。
電車で隣に座った肥満児が、スマホで「肥満児の肉 味」で検索している。
ある明け方、月がお風呂を借りに来たが、満月だったので、湯船の湯はたくさん溢れてしまうだろう。
満員電車に乗り合わせた全ての人の鼻から鼻毛が出ているのを見て、お父さんの実験、うまくいってるんだな、と実感する。
死んだ母に抱きしめられる夢から目覚めると、パジャマが雲まみれだった。
残業中、オフィスの窓ガラスに、先日退職して蛾になった元同僚がぶつかる音が、聞こえてくる。
夕方、「今夜の月を食べないでください」とスピーカーから流しながら走っている軽トラの運転手の背中に、羽が生えている。
そのバスは、心臓の数が残り一つになってしまった人たちを乗せて、楽園へ出発した。
治療のかいあって、一日一回、血とともに口から吐き出されるおみくじが、「吉」から「中吉」になってきた。
日傘にぽたりと太陽の涙が落ちた。
不倫相手の胸のタッチパネルに、左手の薬指で触れたら、不倫相手が誤作動を起こした。
動物園の近くにあるその神社の賽銭箱は、林檎やバナナも入れられるようになっている。
月が入っていた段ボール箱の中で兎を飼う。
母の形見の雨雲の下で、兄がてるてる坊主を作っている。
涙でロックが解除されるスマホが、私の家族だった人々の写真を次々と表示する。
カップ麺の中から、首吊り縄の形の麺を見つけて、ラッキー。
「念仏 10円」と書かれた手製の看板の傍に座っているホームレスが、忌々しげに、千円札をぐしゃぐしゃに丸めていた。
今日は人ごみの日だから、ごみ収集の作業員の人たちが、聴診器を持っている。
その虫を捕る罠を作るために、薔薇の花束とワインを買う。
鼻歌を歌いながら歩いていたら、道に耳が落ちていて、聞かれたら恥ずかしいと思ってとっさに黙って通り過ぎた。
子ども発電所から誕生日の歌が聞こえてくる。
火葬場の煙突の喉仏が煙の動きに合わせてごきゅごきゅと動いている。
刑務所の屋根の上のアンテナがぐるぐる回っているのを見て、今日もみんなをいい人にしているんだな、と思う。
恋人のスマホを調べている時、恋人の物ではない指紋を見つける。
この町の郵便ポストに開いている丸い穴は、流れ星を入れるためのものなんだよ。
無事子どもも生まれて、今は子宮内に書かれた数式を消す薬を飲んでいる。