2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧
この浜の蟹はみな、折れた脚の先に、大きな鋏を、セロテープでくっつけられている。
夜道、前を歩く女のスカートの中から、線香の匂いがする白い煙が一筋、ずっと出続けている。
かつて地球が入れられていたらしい空き箱が宇宙で見つかったが、「4個入り」と書かれている。
燃料の甘納豆が切れて、おばあちゃんロボが動かなくなった。
てるてる坊主がカウンセリングを受けている心療内科の外で、雨が降っている。
雨に疲れてその傘は、クラゲになるため海に飛び込んだ。
パン工場を首席で卒業した後、メロンパンは、メロンに会いに行くことを決意した。
お品書きに「太陽」が増えた寿司屋の大将が、指に包帯を巻いている。
10円分の女の子が入っている箱が届く。
人形の目がすぐ腐るので、近所にある人形の目の自販機には、とても助けられている。
庭の柿の木を伐ってから、いつも私のブログにコメントをくれる「かき」さんからのコメントがぱったりなくなった。
その火葬場は煙を吐く前に、医者から処方された薬を飲んで、煙突を勃たせている。
自動ドアに影を咬みちぎられた。
十字路の真ん中にプリンが一つあり、人にも車にも踏まれることなく、野良猫に食べられることもなく、ただもう長い間、ぷるぷると揺れ続けている。
今日はどの雲が食べられるのか、昔はラジオで放送していたんだぞ。
最後は死刑で、って決めてんだ、と命が七つある男が言う。
深く酔いたい蚊は、俺の血を吸いに来い。
そして神様はその夜の月を品評会に出すことにしました。
悲しい顔をした綺麗なお姉さんが、深夜、雲の自販機で、雨雲を買っていた。
息子の部屋を掃除していたら、蓋に空気穴が開けられた箱が出てきたので、虫でも飼ってるのかと思いおそるおそる中を見ると、首の折れた折り鶴が入っていた。
悪い女に騙されて、夕日は青く光るようになった。
一人の男を手術している執刀医の足元で、上を向いて口を開け、何かを待っている白い子どもたち。
目の前を走る車の後部座席に飾られているぬいぐるみの頭と胴体の数が、何度数えても合わない。
案山子が読む雑誌の今月の特集が「好きな鳥」だった。
水の中に沈んだ町の底から、うろこが生えてきた月を見ている。
父の喪服は股間部分が擦り切れている。
母が月の裏側に何枚も貼っていた、応募期限の切れたパンの応募シールが剥がれて、空から降ってくる。
道行く人々に「ともだちになりませんか」と書かれたポケットティッシュを配っている男が、ぼくにだけそれをくれない。
「孤独な人・・・ひとり」と書かれたレシピを手に街へ出る。
豆腐の新聞のお悔やみ欄を読んでいると、お腹が空いてくる。