超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

月光

あはは、あはは、はは、ははは、ちょ、ちょっと、あの、ごめん、はは、げ、月光が、くすぐったい、はは、から、あはは、カー、カーテン、し、あはは、し、あははははははは!

月光

あ、やべ、蹴っちゃった、月、ずれちゃった、月、ずれた、戻さなきゃ、あ、満月か、あ、やべ、転がる、転がる。

指摘

同じ房の囚人に指摘されて初めて、自分が福耳であると知り、嬉しくなる。

親指

当社の霊柩車なら、親指を隠さなくても大丈夫!

夜中、雨を売る屋台で、おっさんが、屋台の親爺が降らせた豪雨を浴びながら、突っ立って号泣していた。

ガラッ

燃え盛る民家の二階の窓がガラッ!と開いて中からダッチワイフが飛び出し、庭にポトッと落ちた直後に、「ギャー!」という男の叫び声。

冬です。空を横断するファスナーが、開き始めました。もうすぐ雪が降ります。

保健室

いつものように保健室のベッドで寝ている時に、避難訓練が行われた。逃げる皆の足音を聞きながら「焼け死んだー」とつぶやくと、保健室の先生が「私もねー」と言って笑った。

腹減った

腹減ったなぁ。小説書くかぁ。

怒る

お父さんが自分の頭を外し、「今からお前を怒るから」電子レンジに入れた。「8分30秒」うわぁ、かなり怒られるぞ。

RPG

あいつが作ったRPGをプレイした。あいつの前のお母さんと同じ名前のモンスターが、あいつの今のお母さんと同じ名前のモンスターより強かった。

土の匂い

朝焼けとともに土の匂い。朝日を見ると、泥が付いている。お日様畑から採ったばかりの朝日のようだ。

好きです

「好きです」という言葉を飲み込んだあの日から、ずっとしゃっくりが止まらないの。

借り物競争

借り物競争の紙に「童貞」と書かれてあったので親友を連れていこうとしたら、親友が「ごめん」とうつむいた。

女の子が一人、野花に耳を近づけている。何の音を聴いているのかと尋ねると、女の子は「違うの。耳が、鼻ごっこしたいって言うから」

恋人

死んだ恋人と同じ名字が名札に書かれたコンビニの店員に、「付き合ってる人いるんですか?」と訊いてみる。

兄貴の墓

あのさぁ、お前がさっきさぁ、お前の兄貴の墓に供えてたエロ本さぁ、一日だけさぁ、借りていい?

ベビーカー

ベビーカーに千羽鶴をのせた女が前から歩いてきたので、「何あれ?」と思っていたら、とつぜん女がキッと私を睨み、「千羽もありません!」とキレた。

おじいちゃん死ぬ?死ぬの?おじいちゃん死んだらぼく泣く?泣くの?ねぇ?ねーぇ?

墓場

あ、墓場に、ゆうべ俺と、夢の中でやった女の人が、立ってる。

検索

冷房の効きすぎた喫茶店で一人、「嫌いな人 香典 額」で検索している夏。

うちの猫がとうとう鼠語を勉強し始めた。

薔薇

一輪の薔薇の花を見つめているうち、ロボットはだんだんバグっていった。

人形

妹は赤ちゃんの形の人形を、犬に見立てて遊んでいる。

セロテープ

太陽。セロテープで補修されている太陽。セロテープで補修されている部分が、独特の色の光の帯になっていて、綺麗。今はまだ、綺麗だ、と思う。

うどん

近所の墓地からやってきたのであろう人魂が、俺の注文したうどんの周りを飛び回るのを、手で払いのけながらすすっている、夜の屋台。

変だなぁ、好きな人ができたのに、おしっこの色が変わらない。本当はあの子のこと、好きじゃないのかなぁ。

捨て猫

ぼくに拾われるまで、その捨て猫は段ボール箱の中で、哲学書に読みふけっていた。

粘土

粘土で作った理想の妹を、川に投げ込んで、妹を川の事故で失ったかわいそうなお姉ちゃんとして、生きている。

なるべく

猿の殺し方は以下の図解をご参照ください。(かわいそうなので猿はなるべく殺さないでください。)