2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧
夏の昼下がり。母が、弟の骨壺にサイダーを注いでいる。
火葬場の煙突から出てくる煙が、よく見ると、「す・き・で・し・た」という意味の狼煙になっている。
息子の位牌がある仏壇に置かれている美少女フィギュアのスカートの中を、孫がそっと覗いていた。
夏の夜、不良に、お金と、さっき捕まえた蛍をカツアゲされた。
父が死んだ後、母はたびたび体重計に乗って、「痩せてない、おかしいな」と首をかしげている。
商店街に飾られている七夕の笹に、「かのじょ」と書かれた短冊と、その短冊に添えられた一万円札。
その日、その時間、その交差点では、なぜか全ての車のドライバーが一斉に月を見上げて、事故が起こった。
知らない人の墓前に供えられた、作りかけの千羽鶴。
近所の墓地から時々聞こえてくる、リコーダーの音。誰が誰に聞かせているのだろう。
いとこのお姉ちゃんが学生時代、男子から受け取ったというラブレターの山を見せてもらったが、差出人の名前は全部違うのに、内容は全部「耳たぶを噛ませてください」というものばかりだった。
「宇宙へ行きます」という書き置きを残していなくなった母が、三日後、木綿豆腐一丁だけ持って普通に帰ってきた。母はその日から、なぜか一切化粧をしなくなった。
「あたまのよくなるしゅじゅつ さんすう:200えん こくご:100えん」そんな貼り紙を貼っていた民家に、ある日警察が。
コメント欄を見て、このブログでは、母の病状が回復したと書くことにする。
バイト先のドラッグストアに、常連客の女の人が、背中の羽根を抜いた痕に塗るクリームを買いにきた。ふうん、飛ぶの、やめるんだ。よく見たら、左手の薬指に、指輪。
おじいさんは毎晩、おばあさんの服を着せたマネキン人形を抱いて、眠ります。おばあさんは、生きていて、そのおじいさんと一緒に住んでいます。
入水自殺を図ったが、気が付くと、なぜか家の押入にしまってあるはずのダッチワイフにしがみついてプカプカ浮いていた。
背中のファスナーが開いてがらんどうの中が見えている、首吊り死体。
ハッピーバース……じゃないや。「命日」って英語で何ていうの?
独房の隅で、想像上の犬を飼うことにした。名前は、刑務作業の時思いついた「ネジ」にすることにした。
ある日、夕方のニュース番組を点けたら、昔ぼくを捨てて新しい男と出て行った母親が、新しい男との間に出来た子どもを事故でなくしたことを知る。
ベビーベッドの中で泣き止まない娘の頭をはたいたら、泣き声が「エラーです、エラーです、エラーです」という機械音声に変わり、それを聞いていたら、涙がぽろぽろぽろぽろ溢れてきた。
「うわぁ、ぼろぼろですねぇ」その異星人のセールスマンは、地球の太陽を見るなりそう言った。
「m(_ _)m」とだけ書かれた遺書。
「あ、もしもし?今大丈夫?」「大丈夫ー」「何してた?」「犬と将棋ー」「どうだった?」「負けたー」
ちぎれたトカゲのしっぽを握りしめた息子が、泣きそうな顔で自分のちんちんを引っ張りはじめる。
母と叔父にびりびりに破られたのを、私がセロテープで補修した、父の遺影。
「私、死ぬわ」そう言って女はベッドから抜け出し、素っ裸のままピアノを弾き始めた。
お母さんが夜の台所で一人、たこ焼き器の丸いへこみと、自分の眼球を交互に触って、何かを確かめていた。
夜、ゴミ捨て場に捨てられていたエロ本に、スーツのおじさんが、そっと合掌していた。
ダイエット本に囲まれた状態で発見されたミイラ。