2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧
うちのペットの主食はヒトのため息だから、夫の上司が嫌な人で本当に助かっている。
「珍味」の棚で、妹と再会する。
オーブンの中で再び膨らんでいくおっぱいを見つめながら、今日のお客は優しい人だといいな、と思っている。
赤ん坊が吸っているほ乳瓶の中身が黒い。おお、今日からこの子も本格的にうちの子か。
理科室の隅、「誘惑禁止 ※純粋な恋心を育てています」との注意書きが貼られたフラスコの前で、スカートをたくし上げてみたくてみたくて仕方ない。
「ニンゲンナイヨ、ニンゲンナイヨ」と叫びながら、朝のゴミ捨て場、ゴミ袋の山の前で、近所の婆さんが、見えない何か相手に箒を振り回していた。
その蝿は死刑囚の体臭にしか寄ってこないそうだ。
ある夜、風呂場からドカン、と大きな音がしたので見に行くと、最近妙に元気な祖父が裸で倒れており、傍に「合わない 返す」と書かれたメモが落ちている。
あ、停電だ。暗闇から母の声。「またダメだった」母は死んだ弟の運動会を写したビデオを観ていたのだ。弟の笑顔が画面いっぱいに写る場面で、我が家はなぜか必ず停電してしまうのだ。「またダメだった」暗闇の中で母がもう一度言った。
彼女と遠くまでデートできるように、延長コードを買い込む。
死んだ人間を生き返らせると、世界の故障の原因となりますので、ご注意ください。
うちの犬は吠え癖があるが、「録音してますよ」と言うと、ぴたっと黙り込む。
物置の奥の、「病気」とラベルの貼られた赤い瓶がなくなっているのを見つけた次の日、祖父の入院が決まった。
「わんわん」「はい」「わんわわん」「はい」「ばうっ」「はい」「うー、わんわん」「はい」息子のいる手術室から漏れてくるそんな声を聞きながら、執刀医の手の肉球を思い出している。
予報では雨だったがよく晴れた朝、ベランダに吊したてるてるぼうずに、蝿がたかっていた。全力でがんばってくれたらしい。そっと手を合わせ、息子の運動会のためおにぎりをにぎる。
「……一緒に写っているのはお母さんですか?」私の履歴書に貼られた、私しか写っていないはずの証明写真を見て、面接官はそう尋ねてきた。
朝のテレビの製造番号占いによると、今日は元気な挨拶が吉、とのことなので、喉のスピーカーのボリュームツマミを目一杯ひねって出かける。
彼女が飛び降りた屋上の端には、遺書も靴もなく、花占いをした跡が残されているだけだった。
ママのおっぱいは右に「正」、左に「誤」と刺青が施されていて、ぼくはどっちで育ったんだろう。
いじめてもおこられないおとうとがほしくなった××くんは、おみせにいって、700えんのあかんぼうを1000えんさつをだしてかいました。おつりはいくらですか。
「ここから生首蹴っていったんだろうな」とわかる雪の上の轍。
「インターネットは怖いですね」とその老婦人は、空っぽになった亡夫の骨壺を見てつぶやいた。
幼い父が写っている家族写真はどれも、生身の人間は父だけで、あとは「オトサン」「オカサン」「イヌ」等と書かれた木の板が立てかけられているだけだ。
男の首吊り自殺を最後まで見届けた後、UFOは男の足下の遺書を吸い込んで飛び去っていった。
ふと夜空を見上げると、昨日まで月があった場所に数式が浮かんでいる。
一滴でも涙こぼすんじゃないよ、明日の「泣かないゴミの日」に出せなくなるからね。
ゴミ捨て場に置かれた姿見の鏡の前でじっと動かない女。……いや、動けないみたいだ。を取り囲んで、若い男たちが、「ホンマに獲れた、獲れたで」と大騒ぎしている。
その自販機の中にはマネキン人形がいて、体の各部位にボタンがついている。お金を入れてボタンを押すとその部分に御利益があると言われている。中学生の集団が股間のボタンを連打していたり、よぼよぼの老人が震える指で心臓のボタンを押している光景をよく…
深夜、ラジオのチューニングを適当に回していると、ふいに綺麗な女性の声。「お前の心のお時間です……」やや間があって「おかーさんおかーさんおかーさんおかーさん……」
現在××霊園の上空を中心に、巨大な雨雲が発生しています。大雨が予想されますので、皆様黙祷にご協力ください。