超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

大きな猿

 夜中、息苦しさで目が覚めると、大きな猿が、ぼくの首を絞めていた。払いのけても足で蹴っても猿は動じない。やがてぼくは意識を失った。翌朝、いつもの時間に目が覚めた。昨夜のは夢かと思い父に話すと、「ああ、お前ももうすぐ声変わりするんだね」と父は笑った。

 部屋で母の葬式で読む弔辞の原稿を書いていたら、天井から何かがぽとっと落ちてきたので、「虫!?」と思いながらおそるおそる確認すると、床の上のそれは箪笥の奥にあるはずの私のへその緒だった。