超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

訪問者

 アパートのベランダから見える廃工場の敷地に、何だかわからない黒い鉄の箱があり、その存在に気づいたその日の晩、知らない家の呼び鈴を鳴らしている夢を見た。

 仕事を求めてこの街にやってきたが、仕事より先に見つけなければならないものがあるような気がしている。

 あの夢を見た夜から、その黒い鉄の箱が、夜毎じわじわと俺の家の方に近づいてきているのだ。