超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

叔母さんと大きな手

 久しぶりに叔母さんが家に来た。家族はあまりいい顔をしていなかった。この人のこと、私もよく知らない。

「あなたに似合うと思って」

 二人きりになったとき、叔母さんはそう言って、キャリーバッグから古いレコードプレーヤーを取り出した。

「何ですか?」

「あなたを頭から平たくすれば、きっと丸くなるでしょう?」

 叔母さんはその大きな掌を、私の頭のてっぺんにそっと置いた。

「そしたら似合うと思って」

 叔母さんが掌に力を込めたのがわかった。私は叔母さんの手を振り払い、

「これからデートなので」

 と言って立ち上がった。

「あらそうなの。ごめんなさい」

 叔母さんは大きな掌を軽く握り、白い腿の上に置いた。

 私はドアを開け廊下へ出ていく。

「頑張ってね」

 叔母さんが私にそう声をかけた。さきほどより大きくなった掌を私にひらひらと振りながら。