超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

「お耳箱を開けておいて」母はピアノの前に座って言った。言われた通り、耳箱を開ける。中には、母のファンたちから送られてきた彼らの耳がぎっしり詰まっている。一つ一つ並べていく。よく見ると耳は、かすかに震えている。久しぶりに母のピアノを聴くのでうずうずしているのだ。