超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 祖父は幼い頃から、首を吊るために一本の木を育てていたが、その木が成熟する前に戦争にかり出され、死んでしまった。どんなに無念だったろうか。今、その木は庭にあり、時折真っ赤な実を生らす。それは食えたものではないが、その赤い色は、祖父の頬にそっくりだと父は言う。