超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2022-02-13から1日間の記事一覧

祖父は幼い頃から、首を吊るために一本の木を育てていたが、その木が成熟する前に戦争にかり出され、死んでしまった。どんなに無念だったろうか。今、その木は庭にあり、時折真っ赤な実を生らす。それは食えたものではないが、その赤い色は、祖父の頬にそっ…

地蔵

近くで事故や事件があると、その六体の地蔵たちは、赤い前掛けを、よだれのような液体でびしょびしょに濡らす。

某中学校の理科教師が複数の殺人事件に関与していた疑いで逮捕された。彼が出入りしていた理科準備室にある人体模型は、いくつかの臓器に「済」と書かれた紙が貼られていたという。