超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 夜中、窓を小さくコトコト叩く音で目が覚めた。カーテンを開けると蜂が一匹、窓に体当たりしていた。毛だらけの脚に水滴がくっついていて、それが月光にきらめいていた。窓を開けて水滴を舐めると、それはあの人の涙だとわかった。蜂は帰っていった。私はいつまでも眠れなかった。