超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

紙風船

 予報どおり、その日は空から紙風船が降ってきた。毎年のことだが、色とりどりで美しい。空を見上げると、雲の端に、赤い着物やおかっぱ頭がちらちら覗く。私たちの住む村だけの現象らしい。村長は、代々村できちんと供養を続けているゆえのたまものだと胸を張っている。供養に至る前にはとても悲しい出来事があったそうだ。が、村の子どもたちの間では、いつの頃からか「赤い紙風船をキャッチできると恋が叶う」という噂さえ流れている。私も東京へ戻る前に一つもらっておこう。何となく元気が出るから、じゃあ、黄色を。