楽しみにしていたおやつのプリンを冷蔵庫から取り出し、スプーンですくおうとしたのだが、硬くてスプーンが通らない。
ああ、忘れてた。電池だ。
台所の戸棚から単四電池を持ってきて、プリンにセットすると、プリンはぷるぷると美味しそうに揺れ出した。
夢中で食べていると、いつの間にか後ろにお母さんが立って僕をじっと見つめていた。
僕と目が合うとお母さんは「もうすぐご飯だからね」と言いながら作り笑顔を見せた。
僕は、僕がプリンを食べている時のお母さんの作り笑顔が嫌いだ。
「食べる?」
僕がスプーンに一口プリンをすくってお母さんに差し出すと、お母さんは作り笑顔のままそれを断り、そそくさと台所へ去っていった。僕はわざと大きな音を立ててプリンを平らげ、カラメルにまみれた電池をゴミ箱へ放り投げた。さみしかった。