超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

父と子

 病院のベッドで眠る身重の妻の傍でうたた寝をしていたら、突然、「じゃーんけーん!」という子どもの声が病室に響いた。
 反射的にチョキを出して、それから辺りを見回すと、妻がお腹をおさえながらうなされていた。
 慌てて布団をめくると、妻のお腹の真ん中辺りが、パーの形に盛り上がっていた。

 次の日生まれた息子は、今のところ本当に素直で従順な人間に育っている。