超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

影と殺虫剤

 病院の待合室でぼーっと座っていたら、壁にかかった私の影の胸の辺りが、少しずつほどけて、壁の中から誰かが出てきました。
 怖くて動けなかったので、通りかかった看護婦さんに泣きついたら、影のほどけたところに殺虫剤をかけてくれて、そうしたら影が元に戻って、胸もすっとしました。
 待合室に小さな拍手が響いて、看護婦さんは照れたような顔をしていました。