2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
コンビニに併設されている火葬場にある日、「ゴミを焼かないでください」との注意書きが貼られており、悲しい気持ちになった。
君のカルテで折った紙飛行機が一番飛んだよ、と白衣の男が小さな墓石に話しかけている。
台所の三角コーナーをふと見ると、残飯の上に、蝿の名刺が数枚置かれていた。
遊園地のピエロが、一本の針を握りしめたおじさんを連れて歩いて、子どもたちに風船を配っては、おじさんを見るが、おじさんはいつまでも風船を割らない。
蜜柑を与えると開く改札がメンテナンス後、白い筋を取らないと開かないようになって面倒だ。
風鈴を買ったから、明日の風を予約しておいてちょうだい。
外壁やドアに、無数の「満月を返せ」という落書きがされている研究所の上空に、三日月が浮いている。
家の留守番電話に、見覚えのない番号から、「明日の地球はどうしますか」というメッセージが入っている。
夏祭りの金魚すくいの屋台で、前世も金魚の金魚だけをすくって飼う。
雪だるまの免許がなかなか取れない娘の部屋の床に、発泡スチロールで作った偽物の雪が散らばっている。
疲れたサラリーマンが残業中ひとり、自身の影をシュレッダーにかけている。
蝶々賭博の現場に突入した刑事たちが、花の匂いに思わずむせる。
客全員がチップを賭けると、ディーラーは椅子に縛られた男の鼻に、胃カメラを挿入した。
電車で目の前の席にいる女性が抱いていた赤ん坊がよく見ると人形で、あ、人形だ、と思っていたら、女性がその人形のファスナーを開けて、錠剤を取り出した。
月食が起きる予定だった夜空を、刑務所の独房から、拘束衣を着せられた月が見つめている。
温泉施設のマッサージチェアで揺られていた祖父の頭がふいに取れて落ちる。
彼女と会った日の夜、嘘で汚れた舌を、アパートの共同便所の水道で洗っている。
スーツにびっしり猫の毛がくっついているサラリーマンが、捨て猫がいなくなった路地裏に突っ立って、猫の餌の缶詰を素手で食っている。
ナイフとフォークを構えた美食家の前に、一枚の鏡が運ばれてくる。
寂しい心に反応して慰めの言葉をかけてくれるぬいぐるみのセンサーの感度が良すぎて、夜、通りに面した窓辺に置いておくと、ひっきりなしに喋っている。
天国のママに会いたいから肩車して、パパ。
田んぼに仏壇がぽつぽつと置かれているので、あれは何かと農夫に尋ねると、彼は、もう案山子じゃ駄目なんだ、とつぶやいた。
雨の予報を出した天気観測所の前に、貯金箱を持った子どもたちが集まってくる。
今年の風邪はくしゃみの前に鼻の穴が光るからわかりやすい。
「生命」と書かれた自販機が宇宙の果てに立っていて、ずっと「売切」ランプが点いている。
赤ん坊を叱る場合は、赤ん坊を機械に入れて「叱る」ボタンと「遮音」ボタンを押してください。
そういえば人形で遊ぶ前に人形の影の数を確かめなかった。
母がダイエットする宣言をしたので、母の墓前に供える饅頭を甘さ控えめのものにする。
雨男になるための手術を受けながら、彼女とのデートに思いをはせる。
居酒屋のテーブル席に一人で座っているお坊さんが、何もない空間に向かって、「君の戒名当ててあげよっか」などと言って何やら盛り上がっている。