超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2022-03-19から1日間の記事一覧

火星人にさらわれてから、蛸をさばけなくなった板前が、客のいない店内で、ラジオから流れてくる、異星人との悲恋を歌った演歌を聴いている。

めがけて

酒を呑んだ帰り、歩いていたらしょんべんがしたくなった。適当な場所を探していると、道端に小さな段ボール箱が置かれていた。あそこでしよう。箱を覗き込むと、赤ん坊が入っていた。捨て子らしい。赤ん坊めがけてしょんべんをした。何の反応もなかった。あ…

念仏

毎晩日付が変わる頃になると、アパートの隣室から聞こえてくる老婆の念仏の声がうるさいので、ある日とうとう壁を殴ったら、次の日の朝、近所の薬局や弁当屋の割引券が数枚入った茶封筒が、郵便受けに入れられていた。