超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

「あっ、××君」「なあに?」「××君の影、よく見るとキリトリ線があるよ」「本当だ」「ハサミで切ってみようか」「そうだね」チョキチョキ。「ブタだね」「うん、ブタだ。ブタの形の影だ」「××君は本当はブタだったんだね」「そう言われればそんな気がしてきたよ。ぶうぶう」「ほら、ぶうぶう言ってる」「本当だ。ぶうぶう」「ブタと遊んでるとおかしな人だと思われるからもう××君には会えないけど、思い出は忘れないよ」「ぼくも、ぶうぶう、だよ。ぶうぶう」「さようなら。いつかトンカツで会えるといいね」「ぶう」

 夕焼けを眺めていたら、とつぜん夕日に、目玉の写真が映し出された。「こうなる前に……」町じゅうのスピーカーからそんな声が聞こえる。眼科の広告らしい。どうやら真っ赤な夕日を、真っ赤に充血した目玉に見立てているようだ。が、どうにも気味が悪い。たぶんすぐに差し替えになるだろう。この前の完熟トマトの広告の方がよっぽど良かった。

駅の話

「駅(1)」

 電車ごっこをしていた子どもたちが、墓地の前で何かを降ろした。

 

「駅(2)」

 地元の駅は駅員一人で切り盛りしている駅だから、電光掲示板に時折「母が死にました」とか表示されるので面白い。

 

「駅(3)」

 いつも「火星」の駅で降りていくあの子の七枚目の襞に、今日やっとメアドを書いた紙を挟むことができた。

電信柱

 ぼくらの町の電信柱は、虫ピンも兼ねています。だから動き出すことはないけれど、外を歩く時は鱗粉で足を滑らせないように注意しなければいけません。いつか空から見てみたいなぁ、と思っています。

解体

 神社の石段の上から、ネジが一本転がり落ちてきた。続いて、朱く塗った木片がカラコロと。その次に落ちてきたのはナット、バネ、そしてキラキラ光る石。どうやら石段の上で、何かが解体されているようだ。神様じゃなきゃいいけど。