超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

おろし金

 家を出ると霧雨が降っていた。何となくやさしい霧雨だった。しかし遠くの方では強い雨が降っていた。首をかしげつつ空を見上げると、死んだばあちゃんが雨雲をおろし金ですっていた。おろし金でするくらいなら雨そのものを止めることができるような気もするが、その微妙にピントのずれた優しさが、ばあちゃんらしくて笑ってしまった。ばあちゃんに手を振った。気づいてないみたいだった。家を出てしばらくすると霧雨は強い雨にかわった。空を見上げると、ばあちゃんはおろし金を持ったままうとうとしていた。いいよばあちゃん、そのまま寝てな。どうもありがとう。