超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

冷たい枕

 幼い私が、高熱を出して布団の中で震えている。母が私の手を撫でながら「すぐ治るから早く寝ちゃいな」と優しく言うので、私はひとまず安心して目をつぶって寝ようとするが、やっぱり不安で寝つけず、ますます朦朧とする意識の中で、「このまま自分は死んでしまうのかもしれない」という考えが頭に浮かび、突然怖くなってくる。
 私は力を振り絞って目を開け、母を呼ぶ。すると母はものすごくびっくりした顔で、「まだ残ってるなんて」と言う。
 母の傍らにはいつの間にか大きな革袋が置かれており、そこには「××子」という私の名前と、「つめかえ」という言葉が書かれている。次の瞬間、私は母に胸を強く押されて、気を失う。