超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ワニと果実

 職場の旅行で何か森のような場所へ行ったとき、川で遊んでいた同僚の女の子が、そこにいたワニに飲み込まれてしまった。

 上司と話し合った結果、もう助からないだろうと話がまとまり、ワニごと火葬することにした。

 そうなるとこのワニが憎くて仕方ない。近くに生えていた樹に丈夫そうなツタが絡まっていたので、それでワニを捕まえるのがいいだろうということになった。

 上司がワニを押さえ、僕がツタを取りに行った。ワニは自分が何を飲み込んだのかもよくわかっていない様子で、ただ我々の異様な雰囲気を感じ取り、ガタガタ震えている。その震えが小さな波となり、我々の足元にすがりついたが、同情はしていられない。ワニは顔面蒼白である。

 しかし、樹からようやくツタを外し終えた時、その弾みで、樹に生っていた黄色く肥った果実が川に落っこちて、バシャンと大きな音を立て、その音に驚いてワニは死んでしまった。死んだワニを見ると腹の辺りが動いていたが、上司に相談したあと、ツタで縛って火を点けた。