超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

私の叔母と夜の闇

 私の叔母は今年、40になる。マンションの6階で、20も年下の男と同棲している。
 彼女の髪は真っ黒で、腰までまっすぐ垂れている。綺麗な脚がご自慢で、いつも下着が見えそうなくらい短いスカートを履いている。セックスの前に必ず外国のお茶を飲む。チョコも食う。古い携帯をいつまでも使っている。ゴミの日を守らない。

 それから、叔母は鏡に映らない。実家の池にも。
 でも、そんなことを気にする人は今まで誰もいなかった。これからもいないだろう。

 私は一度、叔母がマンションのベランダで、夜の闇に向かって何か話しかけているのを見たことがある。
 叔母の声を聞いていると、胸の奥が締め付けられたような気分になる。

 ちなみに、叔母と同棲している男は映画監督を名乗っているが、誰も彼の映画を見たことがない。叔母も、彼自身も。