超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

おうち

 首にちぎれた縄を巻いた男の死体が、体はうつ伏せのまま、顔だけ上げて、夜道をずるずる音を立てながら這ってきた。ひっと悲鳴をあげようとした時、死体の右の鼻の穴から、何かが飛び出ているのに気づいた。よく見るとそれはカタツムリだった。なあんだ、この死体、カタツムリのおうちだったのか。すごいものをおうちに選んだな、お前。カラスには気をつけろよ。そんなことを思いながらカタツムリと死体を見送った。さっき悲鳴をあげかけた自分が少し恥ずかしかった。