超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ネジ

 ネジをぽろぽろ落としながら、ギイギイと錆びた音を立てながら、さいごの太陽が空を横切っていく。ぼくはそれを見上げながら、裏路地を歩いている。「さいごの太陽です。お洗濯物が乾くのも今日までですよ」どこかの家でテレビがわめいている。ぼくはうつむく。影もうつむく。その影の中に、太陽が落としたネジを見つける。つま先で蹴ったら、ネジは、キラキラと輝きながらドブに落ちていって、そのキラキラした光を見ていたら、ぼくはますます寂しくなった。