超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ビタミン

 赤い鼻がかわいい恋人に、「イチゴみたいな鼻だね」と冗談で言ったら、恋人は「どうしてわかったの」と悲しそうに言い、その途端恋人の顔や体がひび割れてオレンジやバナナになって崩れていき、最後はたくさんのフルーツの山だけが残された。てっぺんには真っ赤なイチゴが一つ。今は毎日泣きながら、恋人だったフルーツを食べて暮らす日々だ。恋人は失ったがビタミンは充分に得ています。