超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

拍手

 庭を掃除していたら、アリの巣の中からパチパチパチ、と慎ましやかな拍手が聞こえてきた。子どもでも生まれたのか。それとも新人が入ってきたのか。ともかく何かめでたいことがあったようだ。派手に騒がないところがいいじゃないの。一体何があったのだろう。ピンポーン。おや、誰だろう。出てみると、宅配業者。小包の送り主を見ると、懸賞雑誌の出版社。開けると、それは高級和菓子セット。もしや、これか。和菓子を半分に割ってアリの巣の傍に置くと。早速わらわらとアリたちが出てきて、私に頭を下げながら欠片を巣へと運んでいった。虫の知らせってやつだったのかな。アリたちと分け合った和菓子は渋いお茶でおいしくいただいた。