うしろはんぶん色をぬり忘れられたネコが
透明なうしろはんぶんを
木漏れ日の中にひたしている
木漏れ日の色に染めたくて
夕方になれば うしろはんぶん色をぬり忘れられたネコは
透明なうしろはんぶんを
おしげもなく夕日にさらす
夕日の色に染めたくて
まえはんぶんだけぶち模様の
うしろはんぶん色のないネコは
裏路地のすみっこにたくましい色の糞をひり
しばらくそれにみとれている
うしろはんぶん色のないネコは
いつだって優柔不断だ
うしろはんぶん色のないネコは
糞を眺めるのに飽きると
透明なしっぽをふりふり
くしゃみをしながら今夜の寝床をさがしに出かける
明日からしばらく雪になることを
うしろはんぶん色のないネコはまだ知らない
たぶんこの冬彼は
おなかを冷やして困るだろう