超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ヒーローと母

 彼は正義のヒーローである。

 彼は今日、港に現れた怪人とその眷属50人を叩きのめした。
 夕方秘密基地に戻り、書類をまとめ、正義の博士の判をもらい、タイムカードを押し、ロッカー室で普段着に着替えたあと、地元のスーパーに赴き、万引きで捕まった母を迎えに行った。
「魚肉ソーセージ盗ったらしいぞ」
 と正義の博士は笑いながら言った。

「お父さんが好きだったから」
「お墓に持ってってあげようと思って」
 帰りの電車で母がぽつりと言った。