超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2024-05-02から1日間の記事一覧

お風呂

冬の夜、私が作った雪だるまに、祖母が「お風呂が沸きましたよ」と話しかけていた。

カラス

カラスは天使の死骸には手をつけず、ただ背中の白い羽根を一本くちばしで抜き取り、飛び去った。

ビルの屋上の端に置かれた「遺書」と書かれた封筒の中から這い出てきた黒い蝶が、落ちた彼とは反対の方へ飛び立った。

雨音

雨音の効果音が入ったテープを一日中流し続けている隣人にうるさいと文句を言おうと、アパートのドアを開けた瞬間、外で雨が降っていることに気づく。

亡き母の顔にそっくりな黴が生えた食パンに向かって、パン職人の父が「浮気者」と怒鳴っている。