2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧
火葬場の煙突から出る煙を見ながらお酒を飲むのが唯一の楽しみだが、今日は煙が途切れないので、いつまでもお酒を飲み続けなければいけない。
実験動物代表として、博士の結婚式のスピーチをする。
夫が死んでから、墓石の脱皮の回数が増えた。
終電に乗ったら、車内にいる人々が全員独り言を呟いているので、私も独り言を言おうとするが、何も浮かばなくて焦っている。
母の命日に母の墓前に供えられているであろう線香の数で、兄と賭けをしたが、見に行くと線香は一本もなかった。
遺体安置室で一晩眠るだけのバイトに行ったら、白衣の男からまず耳栓を手渡された。
放課後の教室で、音楽教師から手渡された封筒の中に、人間の耳が入っていることが、膨らみを触ってわかる。
最近様子がおかしいパイロットの恋人のスマホの検索履歴に「天国 なくなった」の文字が。
その人から定期的に送られてくるファンレターにいつも同封されている家族写真から、だんだん人が減っていく。
野球部の練習が終わると同時に、グラウンド脇に停まっていた霊柩車はどこかへ去っていった。
巨大な金塊の重みで粉々になった賽銭箱を、神社の宮司が呆然と見つめている。
赤ん坊の人形の訪問販売のセールスマンが、本物の赤ん坊がいかに厄介な存在かを語るのを、若い女がうっとりとした顔で聞いている。
下水道で汚水を見つめていたら、上流から、股間が削り取られた人形が流れてくる。
老学者がラブホテルの一室で、巨大な「?」マークと抱き合っている。
蝶の教習所に造花を納品する。
独房の壁に血で描いた女と見つめ合っているうち、初恋というものが理解できた気がしてきた。
夜の墓場で墓石を舐めていた野良犬が、突然二本足ですっと立ち上がった。
鏡に一匹の蟻が這っていて、先日私が除去した目元のほくろのフリをしている。
海を避けるように線路が引かれている私鉄の電車のつり革に、鱗が一枚、くっついていた。
一枚の栞を持った宇宙飛行士が、書物で出来た惑星に降り立った。
母が歯型をつける場所がなくなってきたので、そろそろまた仏壇を新調しなければならない。
近所の公園に設置されている、またがって遊ぶ胎児の形をした遊具の、へその緒の部品が、たびたび折られて盗まれる。
花嫁はウェディングドレスを着たまま、結婚式が始まるまで、保健室のベッドに横たわっていた。
公衆便所の個室に入ったら、床一面に羽をちぎられた蝶の死骸が落ちていて、びっくりして個室を出ると、目の前に虫かごを持った少年が立っていた。
明け方のゴミ捨て場の隅に、顔がぼこぼこにへこんだ人形と、一枚の鏡が、向かい合って置かれている。
真夜中の公園で、ストリートミュージシャンの青年が、昼間自分のギターケースに投げ入れられた肉片を、くちゃくちゃと食っている。
死んだ我が子の写真を栞にして、年老いた女が電話帳を少しずつ読み進めている。
そこの自販機でピアニスト買ってきたから、お前の曲で一服しよう。
父が降らせる雨は決して犬を濡らさない。
アパートの隣室から毎晩女性の悲鳴が聞こえてくるので、大家に相談したら、大家が「あれはカセットテープだから大丈夫よ」と笑う。