その男は毎年一回私の店を訪れて、背中の蝿捕り紙の刺青に、蝿を一匹ずつ彫り足していく。
首吊り縄の輪の内側に綺麗な蝶がとまっていて、首を吊れない。
喫茶店のカウンター席で、隣に座っているおじさんが編んでいる首吊り縄の端っこが、俺のコーヒーに浸かっていることを、いつまでも言い出せない。
手術当日の朝、僕に繋がれた点滴袋をふと見ると、薬の中を泳ぐ鯨が、僕を励ますように潮を噴いた。
遺体安置室案内のアプリを見ている時、「満」のマークを見つけると、何だか嬉しくなる。
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