超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2023-11-14から1日間の記事一覧

病床の母が口から吐く蝶が、だんだん図鑑に載っていないやつになっていく。

絵筆

ある夜、空から一本の絵筆が落ちてきて以来、月は満ち欠けをやめた。

看板

公園の隅、「ぼくにえさをやらないでください」と書かれた看板の下で、おじさんが膝を抱えている。

まな板

閉店後の居酒屋の厨房で、板前がまな板についた魚の血で、数式を解いている。

墓地から「肥ったなぁ~!」という声が聞こえてくるので、見ると、骨壷を抱えたおじさんが、目の前の墓石を笑顔でぺちぺち叩いている。