超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2023-01-01から1日間の記事一覧

兎を抱えた老女がエレベーターに乗ってきて、「月、にお願いします」とエレベーターガールに告げると、エレベーターガールはお辞儀して月行きのボタンを押し、扉が閉まり、そうして長い長い夜が始まった。

その小学校の飼育小屋で飼われていた七羽の兎のうち、六羽が不審死しており、残りの一羽は行方不明で、死んだ兎たちの傍らには、仏像の形に噛み削られた人参が転がっていたそうだ。

ある老詩人の提案により、月の剥製の中には兎毛が詰められることになったため、後に大勢の兎が寒さにガタガタ震えながら、博物館を取り囲んで抗議したそうだ。