2022-02-21から1日間の記事一覧
「立入禁止」の立て看板の向こう、ヘルメットをかぶり、喪服を着た人たちが、マンホールの中から次々現れて、小さな仏像や欠けた茶碗を運び出している。ドブの臭いの中に、微かに線香の香りが混じっている。
謎の封筒が家に届いた。開けると、中には、「あなたの思い出が優勝しました」と書かれた手紙と、金色のバッヂが入っていた。バッヂを、死んだ子の仏壇に供えた。
双子の兄を連れて、母親は失踪した。父親はいなかった。双子の弟は母親の残り香が漂う布団に顔を埋めて、「どうしてぼくじゃないの」と泣いた。母親の鏡台に、花占いをした跡が残されているのには気づかないまま。