その瞬間、目の端に映ったのは、「にせにんげん に ちゅうい」の看板の赤い文字。
××旅館の「脳湯」。湯の底に沈められた脳の色が美しい。湯に浸かると、思春期のことを思い出すというから、脳湯の脳はその年頃の子どものものではないかと言われている。
テレビを点けたら、殺人事件のニュースが報じられていた。父親が娘を殺したらしい。テロップで表示された娘の名前は、読みも漢字も、私と全く同じだった。そのままニュースを観ていると、マンションの一室から手錠を掛けられて出てくる父親が映った。私が昔…
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